タイで髪を切った話

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タイに着いた時、私の髪は胸にかかるほどの長さがあった。
これから1カ月ほど旅をするのだし、泊まるところは安宿ばかりで、時には洗面台で髪を洗うことになるかもしれない。
長い髪がとても邪魔に感じたので、切ってみることにした。
カオサン通りをぶらぶら歩いて、そこからのびる細い裏路地の、ぎっしり立ち並ぶ土産物屋の間に一軒美容院があった。
入る直前、また少し迷った。
長い髪を切る時はいつもそうだ。私はたぶん、なんでも切るのが苦手。捨てるのも苦手。
でもそんな自分が嫌なので、平気なふりをして店に入った。
中年女性が二人。
店内には日本のモデルらしき女の子の写真も貼ってあったけれど、特に参考にできそうもない。
もうなんでもいいから肩まで切ってくださいと伝えて、シャンプー台へ。
ちっとも気持ち良くない荒々しいシャンプー、でもバナナのいい匂いがした。
乾かすこともなく、濡れて水がしたたる髪を、おばさんはカミソリでジャキジャキ切っていく。
乾いていないので、ハラハラ、ではなくばさばさと束になって髪が落ちた。
ほんの数十分で終わり、最後まで乾かしてくれないようなので、濡れた髪のまま鏡越しに写真を撮った。
それはそれはさっぱりした気持ち。
何を迷っていたのだろうか、ばかみたいだった。
髪なんで短い方が楽に決まってるのだ。ことに旅をする身とあればそれはもう。

そういえば、その時私は他にもいろいろうっとおしく感じていることがあったのだった。
髪はたぶん、自分の一部だと思うから切るのに躊躇してしまう。それでなんだかちょっと愛おしくて、、
ああ、でもほんとに切って大正解だった。
その旅は、いつも外国にいる時に感じる寂しさはあまりなく、
ひかれる後ろ髪がないせいですいすいと旅ができた。
髪なんて伸ばしてるからひかれちゃうのかも。

後日談。その後数日間、髪がとてもサラサラで気持ち良かったので、
1カ月後再びバンコクに戻ってきた時に同じ美容院を訪ねた。
あのバナナの匂いのシャンプーほしいんだけど、と言うと、あれは業務用で大きなものしか売ってないのとのこと。
残念。
欲しかったな、バナナのシャンプー。